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新電力関連情報

経産省が急ピッチで進める電力改革の現実味

「理想案」に電力会社からは疑問の声も

2016年末、経済産業省の有識者会議が、電力自由化を推し進めるための中間とりまとめ案を発表した。「電力システム改革貫徹のための政策小委員会(貫徹小委)」(小委員長=山内弘隆・一橋大学大学院教授)が2016年9月の初会合以降、急ピッチで議論してきたものだ。

2016年12月に中間とりまとめ案を発表した経産省の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(写真:共同通信)

 今回の案が実現すれば「経済合理的な電力供給体制と競争的な市場」ができ、「改革の果実を国民に広く還元」できるとうたう。ただ、その内容は複雑で、具体的なルール作りもこれから。今後は既存電力会社と新電力、そして経産省との間で、具体的なルールを巡って熾烈な綱引きが起きることも予想される。

 「貫徹小委」の目論見通りに改革案が実を結ぶかどうかは不透明だ。

「廃炉費用を新電力に」と提言

 貫徹小委の議論のなかで世間の注目を集めたのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故負担を巡る議論だった。原発事故の賠償費用は事故以前から確保されるべきだったが、「政府は何ら制度的な措置を講じておらず、事業者がそうした費用を料金原価に参入することもなかった」(とりまとめ案)。そこで「需要家間の公平性等の観点から福島原発事故前に確保されるべきであった賠償への備え(過去分)」(同じ)を、託送料金を通じて新電力からも回収すべきと提案した。

 この案に対する批判は多いが、「皆で負担するのは一理あると思ってる。理解できないことはない」(東京ガスの広瀬道明社長)と新電力側には受け入れようという機運もできつつある。

 もっとも、新電力が十分に既存電力会社と競争できる環境がなければ、負担の受け入れは絵に描いた餅に過ぎず、新電力側から再び不満が噴出する恐れもある。というのも現状、既存の電力会社から消費者を奪って事業を拡大するのに成功している新電力はほとんどない。既存電力会社が多くの発電所を抱え、売り物である電力を潤沢に確保しているのとは対照的に、保有する発電所が少ない新電力は自由に使える電力を十分には確保できないからだ。

この課題を解決するには、既存電力会社が発電した電力を新電力も使えるようにする必要がある。そこで貫徹小委は市場を通して新電力が潤沢に電力確保できるよう、数々の仕組みを今回のとりまとめ案に盛り込んだ。

 

 

市場の新設案が盛りだくさん

 「ベースロード電源市場」に「先物市場」、「容量市場(容量メカニズム)」に「非化石価値取引市場」…。市場制度を拡充するために盛り込まれた仕組みは数多く、とりまとめ案は極めて複雑だと言わざるを得ない。「こんな案をどうやって具体化していくつもりなのか」(電力会社幹部)とその実現を疑問視する向きもある。

 もともと電力業界には、日本卸電力取引所(JEPX)という市場があり、自前で発電所を持たない新電力でも事業展開できるよう、必要とする電力を前日とか直前に調達できる仕組みがある。だが、既存電力会社から市場に放出される電力の量が十分ではなく、そこでやり取りされる電力量は全体の1割も満たなかった。

 そこで、とりまとめ案では「ベースロード電源市場」という新しい市場を作る計画を掲げる。安価かつ安定的に大量の電力を生みだす原子力や石炭、水力発電で生み出した電力を、新電力などがここで長期に渡って調達できるようにし、発電所を持つ既存電力会社に対しても、きちんと石炭火力などの電力を放出するよう担保する仕組みを作るという。

 現状では、現物の電力しか市場でやりとりできないが、今後は先物市場を作って電力の流動性を高めることも計画。また、需要家が節電した「ネガワット」と呼ばれる電力量に対して、電力会社が対価を支払うような仕組みも検討している。多数の需要家による節電電力を束ねることができれば、それなりの規模になる。これを、電力を発電したのと同義に捉えて、市場などで取引できるようにするわけだ。

 既存電力会社はこれまで、発電所の建設に投じたコストを、何十年もかけて電気料金で回収してきた。総括原価方式により安定して料金回収できたために、大規模投資に踏み切れたわけだ。

 これが撤廃され、価格が安定しない市場原理で電力が売買されるようになると、電力会社(発電会社)は従来のような電力販売の長期見通しを立てづらくなるので、設備投資に後ろ向きになり、発電所の建設や建て替えが進まなくなる恐れがある。これを回避するために、電力だけでなく電力の供給力(容量)に対して送配電会社や電力量小売り業者が対価を支払う仕組み(容量メカニズム)も導入するとしている。

電力を市場でやりとりするデメリットの一つとして、太陽光や風力など再生エネルギーを使って発電した電力の「非化石価値」が埋没してしまう点がある。市場取引では再エネの電力と石炭や天然ガスなど化石燃料で発電した電力とを区別せず、一緒に価格決定してしまうからだ。これでは再エネの拡大は見込めない。そこでとりまとめ案では、電力そのものと、非化石価値とを分け、後者だけを売買できる仕組み(非化石価値市場)を作ることも求めている。

「本番はこれから」

 こうした数々の仕組みが実現すれば電力自由化は進むだろう。ベースロード電源市場が軌道に乗り、市場での競争により電力の調達価格が1kW時当たり1円安くなったとする。新電力が販売する電力の3割がここで取引されるようになれば、調達コストは年間250億円減ると経産省は試算する。先物市場が成立すれば、市場取引の安定性は増し、非化石市場ができれば再エネも拡大。容量メカニズムにより将来に備えた発電設備の確保にも道が開ける。まさにいいことずくめだ。

 もっとも、大まかな枠組みまでは決まりつつあるものの、具体的なルール作りはこれから。たとえばベースロード電源市場に既存電力会社はどこまで電力を放出するのか、放出量をどう担保していくのか。容量メカニズムで発電容量を確保するのは、小売り事業者なのか送配電事業者になるのか、決めなければならないことは山ほどある。

 市場原理の導入により、これまでの安定した経営を揺さぶられることになる既存電力会社は「経産省は勇み足をしている。自分たちの要望をぶつけていって有利な形にしないといけない。本番はこれからだ」(電力会社関係者)と危機感を露わにする。経産省は2020年までに各制度の導入にメドを付けたい考えだが、経産省、新電力、そして既存電力会社間の綱引きが激化することは避けられない。システム改革という理想を経産省は貫き、残り4年で改革実現のメドをつけられるか。真価が問われる。

引用元:日経ビジネスオンライン

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飯山 辰之介

日経ビジネス記者

2008年に日経BP社に入社。日経ビジネス編集部で製造業や流通業などを担当。2013年、日本経済新聞社に出向。証券部でネット、ノンバンク関連企業を担当。2015年4月に日経ビジネスに復帰。

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